「大事な仕事の前になるとお腹が痛くなる」
「忙しい時期になると便秘や下痢をしやすい」
「疲れていると食欲まで落ちてしまう」
このような経験はありませんか。
お腹とストレスは一見別の問題のようですが、実は腸と脳は互いに情報をやり取りしています。
この関係を「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」といいます。
今回は、「なぜ緊張するとお腹が痛くなるのか」という身近な疑問から、腸と脳の関係についてできるだけ分かりやすくご紹介します。
腸脳相関とは?
腸脳相関とは、簡単にいうと、
「腸から脳へ」「脳から腸へ」と、双方向に影響し合う仕組み
のことです。
例えば、大切な発表や試験の前に緊張すると、お腹が痛くなったりトイレに行きたくなったりすることがあります。これは、精神的な緊張が「気のせい」でお腹に現れているわけではありません。脳がストレスを感じると、自律神経などを介して消化管の動きや感覚に影響することがあります。
反対に、腸からの情報も神経などを通じて脳へ伝えられています。
つまり、脳→腸だけではなく、腸→脳という情報の流れもあるということです。
腸と脳はどのようにつながっているの?
腸と脳の関係には、いくつもの仕組みが関わっています。
1.自律神経
私たちの体には、
・活動するときに働きやすい交感神経
・休息するときに働きやすい副交感神経
などからなる自律神経があります。
自律神経は心拍や血圧だけでなく、消化管の働きにも関係しています。
例えば強い緊張やストレスが続いたときに、
「食欲がなくなった」
「胃が重い」
「急にトイレに行きたくなった」
という経験がある方もいるでしょう。
こうした変化にも、自律神経を含む脳と消化管の情報のやり取りが関係しています。
2.ストレスに関わるホルモンなど
人がストレスを感じると、脳を中心とした体のストレス反応が起こります。
これは危険や負担に対応するために本来必要な仕組みです。
しかし、強いストレスが続くと、消化管の動きやお腹の感覚などにも影響することがあります。
そのため、
「仕事が忙しくなるとお腹の調子も悪くなる」
ということは、決して珍しいことではありません。
3.腸内細菌や免疫
近年は、腸内にいる細菌と脳との関係についても多くの研究が行われています。
腸内細菌が作る物質や免疫反応などが、神経や血流を介して脳と関係している可能性が研究されています。
ただし、
「特定の食品を食べれば腸内細菌が整い、気分や体調がすべて良くなる」
と単純に考えることはできません。
腸内細菌と脳との関係には、まだ研究段階のことも多くあります。
「腸活」という言葉だけにとらわれず、食事・睡眠・運動など生活全体を考えることが大切です。
ストレスでお腹が痛くなるのはなぜ?
強い緊張を感じたとき、
「突然お腹が痛くなった」
「下痢をした」
「逆に便秘になった」
ということがあります。
ストレスを感じた脳からの情報が自律神経などを通じて消化管へ伝わることで、腸の動きやお腹の感覚が変化することがあります。
また、お腹の痛みを繰り返していると、
「また痛くなったらどうしよう」
という不安が生まれる場合もあります。
すると、その不安や緊張がさらにお腹の状態に影響することがあります。
このように、
ストレス → お腹の不調 → 不安 → さらにお腹が気になる
という循環になるケースもあります。
過敏性腸症候群(IBS)と腸脳相関
腸と脳の関係を考えるうえで、代表的なものの一つが「過敏性腸症候群(IBS)」です。
IBSでは、
・繰り返す腹痛
・下痢
・便秘
・下痢と便秘の繰り返し
などがみられます。
現在ではIBSは、消化管だけの問題ではなく、腸と脳の相互作用に関わる疾患の一つとして考えられています。
ただし、
「ストレスでお腹が痛いからIBSだろう」
と自己判断することはおすすめできません。
腹痛や便通の異常には、さまざまな病気が隠れていることがあります。症状が続いている場合には、一度消化器内科などの医療機関で確認してもらうことが大切です。
腸と脳のために日常生活で意識したい3つのこと
「腸脳相関を整える特別な方法」があるわけではありません。
まずは、体の基本的なリズムを大きく崩さないことから考えてみましょう。
1.生活リズムをできるだけ一定にする
忙しいと、
「睡眠時間が日によってバラバラ」
「夜遅くまで仕事をしている」
「朝食を抜くことが多い」
など、生活リズムが乱れやすくなります。
毎日完璧に整える必要はありませんが、
・起床時間を大きく変えない
・睡眠時間を確保する
・食事時間を極端に乱さない
といった基本的な習慣を意識してみましょう。
2.食事は「特定の食品」より全体のバランスを
腸内環境というと、
「ヨーグルトを食べればいい」
「発酵食品をたくさん食べればいい」
と思われることがあります。
しかし、特定の食品だけで腸の状態が決まるわけではありません。
野菜、果物、豆類、穀類などから食物繊維を取りながら、さまざまな食品を組み合わせることを基本に考えましょう。
また、お腹の調子には個人差があります。
「体に良いと聞いたから」と無理に食べ続けるのではなく、ご自身のお腹の状態を見ながら考えることも大切です。
3.無理のない範囲で体を動かす
忙しくなると、仕事と自宅の往復だけになり、体を動かす時間が少なくなりがちです。
特別な運動をしなくても、
・昼休みに10分歩く
・一駅分歩く
・エレベーターではなく階段を使う
・休日に散歩する
などでも構いません。
「運動しなければ」と頑張りすぎるより、日常生活の中で無理なく体を動かす機会を増やしてみましょう。
「お腹の不調=ストレス」と決めつけないことも大切です
腸と脳が影響し合うことは分かっていますが、すべてのお腹の症状がストレスや自律神経によって起こるわけではありません。
特に、
・血便や黒い便が出る
・理由なく体重が減っている
・腹痛や下痢が長く続いている
・症状が徐々に強くなっている
・強い腹痛がある
などの場合には、まず医療機関へご相談ください。
「ストレスだと思っていた」で済ませず、必要な検査を受けることが大切です。
当院として腸脳相関についてお伝えしたいこと
腸脳相関は、消化器や神経などに関わる医学的なテーマです。
当院では、腸の病気を診断したり、腸脳相関そのものを整体によって改善したりすることを目的としているわけではありません。
一方、18年間クライアントさんのお身体についてお話を聞いていると、
「仕事が忙しい時期は肩や腰だけでなく、お腹の調子もよくない」
「寝不足が続くと体全体が重く感じる」
「仕事が落ち着くと、肩の力も抜けて体調が良い」
といったお話を伺うことがあります。
慢性的な肩こりや腰痛について考えるときにも、筋肉や関節だけに注目するのではなく、
・睡眠は取れているか
・体を動かす時間はあるか
・同じ姿勢が続いていないか
・仕事や日常生活で無理が続いていないか
など、その方の生活全体を見ることが大切だと私は考えています。
当院でも、カウンセリングの際には痛む場所だけでなく、こうした日常生活についてもお聞きしています。
まとめ|腸と脳は別々ではなく影響し合っています
緊張するとお腹が痛くなったり、忙しくなると便通が変わったりする背景には、腸と脳が双方向に情報をやり取りする「腸脳相関」が関係している場合があります。
ただし、
「腸を整えればすべての不調が良くなる」
という単純なものではありません。
食事だけでなく、
・睡眠
・運動
・仕事や生活上の負担
・ストレス
なども含めて、日常生活全体を振り返ってみることが大切です。
体の調子が何となくすぐれないとき、
「悪いところはどこだろう?」
と一か所だけに原因を求めるのではなく、
「最近、無理が続いていなかったかな」
と生活全体を振り返るきっかけにしていただければと思います。
なお、お腹の症状が続いている場合や気になる症状がある場合には、まず消化器内科などの医療機関へご相談ください。
この記事を書いた人
竹田 勝
たけだ整体院町田 院長/整体師
施術歴18年。慢性的な腰痛や肩こりでお悩みの方を中心に、筋肉や関節だけでなく、姿勢、体の使い方、歩行、セルフケア、日常生活まで含めたサポートを行っています。
JR横浜線・小田急線 町田駅から徒歩4分。
→ 院長プロフィール
参考資料
・福土 審「腸脳相関」日本神経回路学会誌
・National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)「Irritable Bowel Syndrome」
・日本自律神経学会誌掲載「腸内細菌叢を介した脳腸相関のメカニズムと治療応用の新展開」